何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
「……あの子は。隼輔くんは。俺の子なんだよな?」
隼也がその名を呼ぶことを、ずっと願っていた。
でも願うだけで、叶うわけがないと思っていた。
嬉しくて、胸がいっぱいで。コクン、とゆっくり頷く。
隼也は私の頰の涙を優しく拭った後に、嬉しそうに笑ってもう一度抱きしめた。
「……今まで大変だっただろ。一番肝心な時に、そばにいてやれなくてごめん」
「それはっ……全部私のせいで」
「違う。俺だって探そうと思えばいくらでもやり方はあったんだ。やろうと思えば、人を雇ってお前を探すくらいできたんだ」
「……隼也」
「それをしなかったのは、単純に怖かったんだ。舞花に嫌われたと思ってたから」
「そんなわけっ!」
「お前がそんなやつじゃないってことはよくわかってるけどさ。……でも、お前に拒絶されるのが怖かったんだ」
だからおあいこだ。
頭の上から聞こえた笑い声に、また一つ頷く。
「心細かっただろ。怖かっただろ。寂しかっただろ。何も知らないままお前を責めて、本当にごめん」
「ううん。私の方こそ、黙っててごめん」
お互い謝っている間に、そろそろ昼休憩が終わりの時間に近付いていた。