何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
これからのこと
十七時過ぎに、託児所に隼輔を迎えに行った後。
目の前の道路には、見覚えのあるセダンが一台停まっていた。
それは昼間に見た隼也の車で。
「舞花、乗って」
「いやだからチャイルドシート無いから……え?」
「用意した。ほら、早く」
つい先ほどまでは無かったのに、今は後部座席にチャイルドシートがついていた。
驚きつつも、ここまでしてくれていたら断るのも申し訳ない。
「家すぐそこなんだけど……」
「いいから」
隼也に言われるがままチャイルドシートに座らせてベルトを止めた。
そのまま後部座席に座るように促され、隼輔の隣に乗り込んだ。
一週間前と同じく、部屋に招き入れる。
違うことと言えば、隼輔が起きていることだろうか。
「ままぁ、このひとだあれ?」
前回と全く同じことを言って私の後ろに隠れている隼輔を見て、少し笑えてきた。
隼也は困ったように笑いながら、ネクタイを緩めてシャツの袖を捲り、隼輔と仲良くなろうと必死に喋っている。
「俺、隼也って言うんだ」
「しゅーや?」
「しゅ、ん、や」
「しゅーうーやー!」
何度教えてもシュウヤと言ってしまう隼輔は、
「ぼく、しゅんちゃん!」
とドヤ顔で自己紹介をして隼也を笑わせる。