何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
「託児所でね、先生方がしゅんちゃんって呼んでくれてるの」
「確かに呼びやすいよな。俺も昔はそう呼ばれてたし」
「それもそうだね。そんなところまで一緒だ」
「ははっ、お前が似た名前にするからだろ」
「だって、なんとなくそうしたかったんだもん」
他にもたくさん候補はあったものの。
生まれてきた時の顔を見て、この名前に決めた。
「生まれた時からもう隼也にそっくりだったから」
当時のことを思い出して笑っていると、
「……俺もその場にいたかったな……」
となんとも切なそうな表情で隼輔を抱っこしていた。
隼輔は楽しそうにきゃっきゃっしていて、こうしてみると全く違和感が無くて、本当の親子にしか見えない。
その様子を見つめながら、私は寝室の棚の一番奥にある一冊のアルバムを取り出した。
「隼也」
「ん?」
隼輔を抱っこしたまま振り向いた隼也に、そのアルバムを渡す。
「これ、隼輔が生まれた時から今までの写真が入ってるの。隼輔もこれ見るの好きだからよく開くんだけど、良かったらご飯作ってる間、二人で一緒に見ててくれる?」
「おぉ。さんきゅ。……よし隼輔、一緒にアルバム見るか!」
「あうばむ?」
「アールーバーム!これ、写真!見ような!」
「うん!」
普段は人見知りが激しい隼輔だけれど、何故だか隼也には全く人見知りしない。
もしかしたら何か本能的に感じ取っているのだろうか。そう感じざるを得ないくらい、二人の距離感はとても近くまさに親子そのもの。
嬉しそうに笑う隼輔を見て、やはり私一人で母親も父親役もやるのは限界があったなあと感じた。