何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
気が付けば一時間が経過していた。
テレビでは音楽番組が流れており、懐かしい曲の数々に目を細める。
「……昼間言ったことだけどさ」
「ん?」
「俺たちの、これからのこと」
「……うん」
テレビに向けられた視線が、ゆっくりと私に向く。
絡み合った視線は、熱を帯びているような気がした。
「俺と結婚してほしい」
「え……?」
私の手をぎゅっと握り、
「舞花、結婚しよう」
もう一度プロポーズの言葉を口にした。
何かを決意したような力強い瞳。
驚いて、言葉を失った私に隼也は微笑む。
「いきなりそんなこと言われても舞花が困るのもわかってる。俺たちだけの問題じゃないこともわかってる。隼輔の気持ちもあるし、いきなり現れた男が実は父親でした、なんて。子どもがすぐに受け入れられないことくらい、わかってる」
「……じゃあ、どうしていきなり……」
"これから"がある。それだけで嬉しかったのに、結婚?
頭が追いつかなくて、しどろもどろになってしまう。
「言ったろ?もう後悔したくないって」
目に涙が滲む私に、隼也は笑うのだ。