何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
そんな今日は、隼也とお出かけ、ではなく。
仕事の関係で、せっかくの金曜日なのに急遽業務後に取引先の重役との会食の予定が入ってしまい、帰りが遅くなってしまうため隼輔を実家に預けることになっていた。
今までにも何回か泊まりに行っているため、隼輔はおじいちゃんもおばあちゃんも大好き。
今もきゃっきゃっと喜んでお母さんに抱っこしてもらっている。
しかし隼輔だけでのお泊まりは初めてだったため、私の方が不安で寂しくなってしまっていた。
お母さんに隼輔が寂しがらないうちに早く行って!と急かされ、朝早く私は実家から外に出て会社に向かう。
「おはようございます」
「おはよう津田島さん。今日は本当に申し訳ないね。隼輔くん、大丈夫かい?」
「はい。母に預けてきました。明日に迎えに行く予定です」
「そうか、良かった。どうしても津田島さんに来て欲しいと先方に言われた時はどうしようかと思ったけれど、本当に助かったよ。ありがとう」
今日の会食は、古くからTOKIWAとの繋がりがある玩具メーカーである【エーデルワイス】の専務取締役と営業本部長とのもの。
TOKIWAの製品は元々三十代から四十代ほどの女性をメインターゲットにしているものの、二年ほど前に業務拡大のために若い女性をターゲットにした新レーベルを発表した。
もっと若い顧客も取り込もうという作戦なのだろう。その年代の女性たちが子どもだったころに人気があったキャラクターや、今ネットで人気を博しているキャラクターなどとコラボした新商品や季節限定のものをリーズナブルな価格で提供している。