何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
「ありがとう……ございます」
「お父さん、お母さん。ありがとう」
潤む涙がこぼれ落ちそうになりながらも、それよりも感謝を伝えたくて何度もありがとうと笑う。
隼也はもう頭を下げっぱなしだ。
そんな時、
「じぃじ、ばぁば、ありあとー!」
いつのまにか遊びに飽きて戻ってきたのか、隼輔が私と隼也を真似して器用にお辞儀をした。
不意に訪れたその光景が可愛くて面白くて。
隼也も思わず顔を上げた。
「ははっ、隼輔も嬉しいもんね。ありがとうだね」
「うん!ありあと!」
「あらあら、可愛いわねぇ。どういたしまして」
よしよしと皆から頭を撫でられてご機嫌な隼輔は、
「しゅーや!おえかき!」
とどこから持ってきたのか、隼也にお絵描きセットを見せて一緒にやろうとせがむ。
「隼輔、お絵描きはそっちのテーブルでしてね」
隼輔にダイニングのテーブルを指差すと、一生懸命隼也の手を引っ張ってそちらに連れて行く。
それを見て吹き出す私と両親、そして困りながらも嬉しそうに「じゃあお絵描きするか」と隼輔の頭を撫でる隼也。
微笑ましい光景に頰が緩む。
その後私たちはお父さんが隼也とどうしてもお酒を飲みたいと言ってきかなかったため、急遽実家に一泊することになった。