何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。



"もちろん、行かせてもらうね"



ふぅ、と深い息を吐きながらそう返事をしていると、横から隼輔が立ち上がって手を伸ばして、私の頭を雑に撫でる。



「ままぁ、いいこいいこ」


「……え?」


「まま、なかないで?」



ため息をついているように聞こえてしまったのかもしれない。


落ち込んで泣きそうに見えてしまったのだろうか。


必死に私の頭を撫でて励まそうとしてくれる隼輔のほうが今にも泣きそうな表情をしているのに。



「……うん、ありがとう隼輔」



健気な息子の姿に、思わず笑みがこぼれる。


安心したように微笑んだ隼輔をギュッと抱きしめる。



「隼輔のおかげて元気になったよ」



抱きしめたまま隼輔を褒め称えているうちに、心が晴れやかになって勇気が湧いてくる。


いつだって、この子が私の一番の原動力だ。



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