何も言わないで。ぎゅっと抱きしめて。
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そして迎えた週末。
「緊張してる?」
「うん。してる。……隼也のご両親に会うのすっごい久しぶりだし……」
腕の中で寝ている隼輔が落ちないように何度も抱っこし直しながら、バクバクと動く心臓に緊張が増していく。
隼也の運転で着いた先、懐かしさを覚える戸建ての外観を見て、ひとつ深呼吸をした。
インターホンを鳴らした隼也の隣に並ぶと、すぐに鍵が開く音がした。
ドアが開いた先に見えたのは、隼也と似ている一人の男性。
「兄ちゃん、久しぶりじゃん」
「よぉ啓也。元気だったか?」
「まぁそれなりに。……舞花ちゃんも久しぶり」
隼也の弟の啓也くん。隼也と同じで堀の深い顔立ちがかっこいい。
私たちよりも七つ年下の彼は、まだ未成年で学生のため実家暮らしらしい。
「うん。啓也くん、久しぶりだね」
私も学生時代はまだ幼い啓也くんとも遊んでいたため、どうやら記憶の片隅に置いておいてくれたらしい。
私を見て明るくなった表情にこちらまで嬉しくなる。
入って、と早速促してくれる啓也くんにお礼を言って、鷲尾家の中に入った。