猫目先輩の甘い眼差し
救世主


「急がないと……っ」



ノートが入ったマイバッグを持って、小走りで自転車置き場へ向かう。


新しいノートを買った後、文房具やら雑誌やら、色々見てたら遅くなっちゃった。


荷物を自転車のかごに入れ、鍵を挿し込んで動かす。


只今の時間、午後6時過ぎ。

まだ外は明るいけど、もうすぐ晩ご飯の時間だから早く帰らなきゃ。


道路沿いに咲いている桜の下を駆け抜ける。

風に乗った花びらがふわっと舞ってすごく綺麗。


信号待ち中に桜を観賞し、横断歩道を渡って住宅街の中へ。


あれ……? お母さん……?


夕日に目を細めながらペダルを漕いでいると、遥か前方の道端で立ち話をしている母らしき姿を見つけた。


ご近所さんと井戸端会議?
と思ったけど、相手は大きなリュックを背負った男の人。

背丈と立ち姿からすると、この辺りの人ではなさそう。


お互いに頭を下げ合った後、なぜか男の人は手を振って去っていった。

その不思議な光景に首を傾げつつ、自転車から下りて駆け寄る。
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