猫目先輩の甘い眼差し
弱音を吐いた私の肩をポンと叩いた月香ちゃん。
……そうだ。
乗ってみる? と言われただけで、どこかに行こうとは言われていない。
先輩のこれまでの言動を振り返ると、遠回しに物を言うタイプではなさそう。
指導された時、優しめの口調だったけど、それは良くなかったってハッキリ言ってたから。
もし行くのなら、ストレートに誘うよね。
それなのに私は、一緒に遊びに行くんじゃないかとばかりに……。
「ねぇ、零士さんの話してるの?」
「あっ、樫尾くん!」
俯いていると、背後から樫尾くんが会話に入ってきた。
「聞いてたの?」
「ちょっとだけ。ごめんね。先輩の名前が出てきたからつい」
低音ボイスで可愛らしく謝った樫尾くん。
笹森くんは忙しいからわからないけど……樫尾くんは乗ったことあるかな? 付き合いも長そうだし。
「浮かない顔してるけど、どうかしたの?」
「実は昨日、一ノ瀬先輩とバイクの話をしてたら……」
顔を上げて、昨夜に起こった出来事を再び1から話した。