猫目先輩の甘い眼差し
✾✾


その日の放課後。



「失礼します」

「あ! 市瀬ちゃん!」



部室に向かうと、朝日先輩が待ってましたと言わんばかりに駆け寄ってきた。



「こんにちは。この前話してた犬の動画、撮ってきたので見せますね」

「ありがとう〜!」



スマホを取り出してアプリを開く。


これから見せるのは、母が飼っていた犬の動画。

おばあちゃんの買い物に付き合った日、実家を掃除したら、昔のビデオテープを見つけたんだって。



「可愛い〜! マルチーズ?」

「はい。名前はユキちゃんって言ってました」



野菜が盛りつけられたご飯を食べている、母の元愛犬ユキちゃん。

動画に映る母の声に耳を傾けると、どうやら誕生日だった様子。ご飯も手作りみたい。

この頃から既に料理するのが好きだったのかぁ。



「わぁ、古いね。何年前の?」

「20年以上前ので……って、目黒先輩⁉」



左隣から声が聞こえて顔を向けると、目黒先輩がいつの間に立っていた。


ビックリした……。
さっきまで犬グループにいなかった?

今度はマルチーズに反応してやってきたのかな。
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