猫目先輩の甘い眼差し
✾✾



中間テストが終わり、6月最初の日曜日。



「あら、どこか行くの?」

「部活の先輩と出かけてくる。夕方には帰るから」



靴を履きながら母に詳細を伝え、玄関前の鏡で全身を確認する。


今日は待ちに待った、一ノ瀬先輩と約束していたツーリングの日なのだ。


持ち物を再度見直して戸を開けた。


午前10時半過ぎ。天気は晴れ。風は弱く、生暖かい。

少し暑いけれど、視界良好でツーリングにはピッタリの気候だ。



足を運ぶこと数分。待ち合わせ場所の公園が見えてきた。

入口に回ると、鮮やかな青のバイクが1台停まっているのを見つけた。



「一ノ瀬先輩……⁉」

「あ! おはよう!」



手を振る先輩に会釈し、小走りで駆け寄る。



「おはようございますっ。早いですね」

「市瀬さんこそ。まだ20分も前だよ?」



サラサラの黒髪を揺らして、くしゃっと笑った一ノ瀬先輩。

上下黒の服で、防具やヘルメット、手袋も黒。

いつもは優雅な猫さんだけど、今日はちょっぴりワイルドな猫さんみたい。
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