猫目先輩の甘い眼差し
親子揃ってちゃぶ台の下を覗き込み、呼びかける。
無表情だけど、瞳は不安と恐怖の色でいっぱい。
少し手を伸ばすと後退りしてしまった。
「……落ち着くまで、そっとしておいたほうが良さそうだな」
「……うん」
ちゃぶ台の下で、「本当にごめん」と、3回目の弱々しい謝罪を受けた。
もう、せっかく平和だったのに。
こんなことなら仲間に入れなきゃ良かった。
……でも、ちゃんと自分の役目を果たした上、余った時間で協力しようとしてくれた。
くしゃみも生理現象だし、したくてしたわけじゃない。これ以上責めるのはやめておこう。
のどから出かけていた言葉を抑え、後ろに下がって頭を上げる。
──コンコンコン。
「何してるの~? あらっ、開いてる」
振り向くと、準備を終えた母が窓の隙間から顔を覗かせていた。
「ダメ! 閉めて!」
「へ? うわぁっ!」
咄嗟に叫んだが、時すでに遅し。
ちゃぶ台の下から勢いよく飛び出した茶色い生き物は、脇目も振らず、母めがけて飛びかかった。