猫目先輩の甘い眼差し


別に、愛してなかったわけではない。 


遊ぶ時も一緒で、勉強する時も隣にいて。
お散歩も毎日のように行っていて。

毎日たっぷり、これでもかってほど可愛がったからこそ、後悔が少なかったんだと思う。


それに比べて両親は、私が生まれたのを機に、触れ合う時間が減った。

子守りを頼むくらいだったから、相当忙しかったんだろう。



「落ち込んでたって言いましたけど、あからさまに顔には出てなくて。陰で悲しんでたんです」

「なるほど……空元気だったわけか」



夜中、トイレに行こうと起きた時、和室で声を殺して泣いているのを見てしまった。

そこは……まめおがよくお昼寝していた場所で。


『ごめんね』って何度も呟いてたんだけど……。

その言葉に、「かまってあげられなくてごめんね」「我慢させちゃってごめんね」の意味を感じて、心が痛くなった。


私が生まれたから、長い間深い悲しみを負ってしまった。

これ以上、私のせいで悲しんでほしくない。悩んでほしくない。


それから徐々に、悩みを打ち明けたり相談をしなくなっていったんだ。
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