猫目先輩の甘い眼差し


「すみません。長々と暗い話を……。よく、穏やかだねとか、優しいねって言われるんですけど、抑えてるだけで、本当は全然違うんです」



「騙してしまってごめんなさい」と深く頭を下げる。



「そんな、騙されたなんて全然思ってないよ。それに、人間なんだから、色んな面があるのは当然でしょ?」

「っ……」



あぁ、また器の広さを見せつけられた。

どうして偽っていた人間に優しい言葉をかけるの?

余計に心の弱さと狭さが悪目立ちして、どんどん惨めな気持ちになっていく。



「それでも……神経質でいいことなんて1つもないです。気を遣わせてしまいますし、動物にも悪影響です」



ピリピリしている人と、余裕があって落ち着いている人。

どちらに診察してもらいたいかなら、圧倒的に後者のはず。

動物だって同じ。安心して身を任せたいはずだ。


今のうちに直さなきゃ、将来、動物医療界の嫌なお局になってしまう。


すると。



「……確かに、動物にとってはストレスがかかるかもしれない。だけど、程度によっては長所になると思うよ」
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