猫目先輩の甘い眼差し
「樫尾くんは何にするか決まった? 出る競技」
男子の希望も知りたいと思い、目の前の大きい背中に向かって尋ねてみた。
「んー、卓球かバスケかな。だけど、今年は水泳に選ばれそう」
「選ばれそう? どういうこと?」
「希望する人があまりいないみたいだから。あと、『いい体してるんだから出ろよ』って言われてさ」
か、体……⁉ 技術が優れてるとかじゃなくて⁉
「なになに? 樫尾くん、ムキムキボディなの?」
「いや、ムキムキってほどでは。まぁ、バイトしてるから体力には自信あるけど」
普段鍛えてるんだろうなというのは、その腕を見ればなんとなくわかる。
でも、筋肉が多いと沈まない? 脂肪よりも重いって言われてるし。
「おお〜っ、たくましい。ちなみに何泳ぎが自信ある? バタフライとかできる?」
「いや、そこまでは。無難にクロール。その次は背泳ぎかな」
目を輝かせる月香ちゃんに冷静に答える樫尾くん。
心配していたけど、カナヅチではなさそう。
それぞれ出たい競技に当たるよう、心の中でお願いしながら希望欄に丸を書いた。