猫目先輩の甘い眼差し


──ブーッ、ブーッ。



「ごめんっ。ちょっと出てくる」

「わかった。この辺見てるね」



振動するスマホを手にお店の外に出ていった月香ちゃんを見送った。


戻ってくるまで他の石も見てみよう。

一ノ瀬先輩のは……ありゃ、売り切れてる。アクアマリンっていうのか。見たかったなぁ。

じゃあ次は樫尾くんのを……。



「世蘭ちゃん、ただいま」

「あっ、おかえり」



トパーズのネックレスを見ていると、月香ちゃんが戻ってきた。

けれど……なんか、顔が暗いような。



「どうしたの? 変な電話だった?」

「ううん。お母さんから。……実は、熱が出ちゃったみたいで。少し早く帰ってきてほしいって言われたの」



話によると、ここ最近体調が優れず、いつもより早く寝ていたらしい。

恐らく夏風邪じゃないかな、とのこと。



「大丈夫なの? お家、他に誰かいる?」

「ううん。お父さん仕事だから、お母さんだけ」

「1人なの⁉ それじゃ早く帰らないと!」

「でも、まだ来て1時間しか経ってないよ……」
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