猫目先輩の甘い眼差し


一ノ瀬先輩がショーケースのヘビに向かって話しかけた。

そんな彼の背中を、朝日先輩はバシッと叩いた。

本気で怒っているわけではなく、冗談だと捉えて笑っている様子。


目黒先輩の時と同じくらい、すごい音がしたな。

そしてあのヘビ、朝日先輩も平気なんだ……。


キャッキャとはしゃぎながら移動する2人をボーッと眺めていると。



「魚んとこ行ったな。俺らも行くか」

「っま、待ってくださいっ」



歩き出そうとした先輩を呼び止めた。



「少し、遠回りしませんか?」

「ええっ。そしたら見失っちゃうよ」

「ですけど、この先はちょっと……」



視線を落として「怖いです」とポツリ。


先輩達が向かった熱帯魚コーナーがあるのは、爬虫類コーナーの奥。あの派手なヘビの前を通らないといけない。

1回見ているとはいえ、まだ少し怖い。



「んええ、なら俺の背中に……。やばっ、戻ってきた。とりあえずこっち来て」



まごつく私の腕を引っ張って、触れ合い広場に向かった目黒先輩。

犬と猫のカタログをそれぞれ取り、開いて顔を隠した。
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