猫目先輩の甘い眼差し
「うぉっ! 市瀬さん!」
「っせ、先輩……」
大きな荷物を背負った一ノ瀬先輩。
ちょうど稽古が終わり、今からバス停に向かうところだったらしい。
「おつかい?」
「はい。急遽頼まれて」
「そっかぁ。お疲れ様」
「先輩こそ。お疲れ様です」
どうしよう。顔を直視できない。
西日が眩しいからというのもあるんだけど、昨日、デート現場を目撃しちゃったから、その時の光景がチラついて……。
『ちょっと一ノ瀬くん! 私こっち!』
『あ! ごめん!』
『もー!』
私だけが中に入ることができなかった場所で、満面の笑みを浮かべていた。
他にも、愛犬の服選びやおもちゃ選びに付き合ってあげたり。
ペットショップを出た後も、朝日先輩に似合うアクセサリーや服を選んでいた。
途中で見失っちゃったけど、私と一緒に来た時よりも何倍も楽しそうで。
傍から見たら、美男美女カップルのようだった。
「市瀬さん? おーい」
呼びかける声にハッと我に返ると、いつの間にか先輩が目の前にいて、心配そうに顔を覗き込んでいた。