猫目先輩の甘い眼差し
一ノ瀬先輩に彼女がいないのは、なんとなく予想できる。
もしいたら、他の女の子をバイクの後ろに乗せたり、2人で遊びに行くことはしないはずだから。
だけど──。
「……なんで、秘密にしてたんだろう」
そう呟いた声は、ジューッとお肉を炒める音によってかき消され、母の耳に届かずに済んだ。
あの時、一ノ瀬先輩は朝日先輩の名前を出さなかった。
完全犬派の目黒先輩に黙っているのは納得できるとして、どうして中立派の私にまで?
まさか、お忍びデートだったとか……?
でも、楽しそうだっただけで、甘い雰囲気は全然なかったし……。
あぁダメだ。頭がこんがらがってきた。
来週、平常心で顔を合わせる自信がないよ……。