猫目先輩の甘い眼差し
「ただいま」
「あら世蘭! おかえり!」
私の声に気づいた母が少し興奮気味に返事をした。
よく見ると、汗で髪の毛が濡れている。
何があったんだろう。
「何話して……あれっ? なんでベルがいるの?」
笑顔を浮かべている母の腕の中で、くつろいでいるベンガル猫が視界に入った。
この子は愛猫のベル。この春で1歳を迎えたばかりの女の子。
「ちょっと脱走しちゃってね。追いかけてたら、さっきの人が捕まえてくれたの」
話を聞くと、晩ご飯を作った後、キッチンを片づけていたらしく。そこに、匂いに興味を示したベルがやってきた。
しかし、片づけに夢中になっていて気づかず、ゴミを出そうと勝手口を開けてしまい、逃げ出してしまったとのこと。
ケージに入れてたんだけど、鍵が最後までかかってなかったのだそう。
てっきり怪しいセールスマンに絡まれてたのかと思った。
「無事で良かったけど、気をつけてよ。ベル、好奇心旺盛なんだから」
「ごめんね。次からはちゃんと確認する」