猫目先輩の甘い眼差し


「ただいま」

「あら世蘭! おかえり!」



私の声に気づいた母が少し興奮気味に返事をした。

よく見ると、汗で髪の毛が濡れている。

何があったんだろう。



「何話して……あれっ? なんでベルがいるの?」



笑顔を浮かべている母の腕の中で、くつろいでいるベンガル猫が視界に入った。

この子は愛猫のベル。この春で1歳を迎えたばかりの女の子。



「ちょっと脱走しちゃってね。追いかけてたら、さっきの人が捕まえてくれたの」



話を聞くと、晩ご飯を作った後、キッチンを片づけていたらしく。そこに、匂いに興味を示したベルがやってきた。

しかし、片づけに夢中になっていて気づかず、ゴミを出そうと勝手口を開けてしまい、逃げ出してしまったとのこと。

ケージに入れてたんだけど、鍵が最後までかかってなかったのだそう。


てっきり怪しいセールスマンに絡まれてたのかと思った。



「無事で良かったけど、気をつけてよ。ベル、好奇心旺盛なんだから」

「ごめんね。次からはちゃんと確認する」
< 2 / 312 >

この作品をシェア

pagetop