猫目先輩の甘い眼差し
ほんのり頬を赤らめて、「応援ありがとね」と口にした一ノ瀬先輩。
最後──私は彼らに名指しで声援を送った。
1人だけを選ぶことはできなかったから、どっちの名前も叫んだけど。
「ちゃんと聞こえたよ」
「本当ですか?」
「うん。後半の後半、ラスト5メートルらへんだったかな。違う?」
「……いえ、合ってます」
『一ノ瀬先輩‼ 樫尾くん‼ 頑張って‼』
最後の最後で応援したの、聞こえてたんだ。
バシャバシャ泳いでたし、あちこちで大声が飛び交ってたから、かき消されてもおかしくなかったのに。
「どっちも応援してたけど……俺の名前を先に呼んでくれて、すごく嬉しかった。あれで最後の力が出せて勝てたと思う。だから……」
そう言いかけると、手に持っている花束を差し出してきて。
「受け取ってください」
「っ、そんな! 申し訳ないです……!」
目の前には、赤を基調とした色んな種類の花が満開に咲いていて、芳しい香りが漂っている。
こんな綺麗な花束を、ただ応援しただけの私が、クラスメイトでもない私が受け取ってもいいのだろうか。