猫目先輩の甘い眼差し


「本当にいいんですか……?」

「うん。香りとか、苦手じゃなかったら」

「……ありがとうございます」



恐る恐る花束に手を伸ばし、鼻から息を吸い込んだ。

……いい香り。部屋に置いたらぐっすり眠れそう。



「あの、どうして私の声が聞こえたんですか? 他にも応援してた人、たくさんいたのに」

「それは…………好きな人の声だったからだよ」



少し目を伏せた後、真剣な眼差しを向けてきた。


えっ……それって……。



「あぁ〜っ、腹減った〜」

「マジそれ〜。なんか食ってから帰る?」



目を見開いていると、校舎裏から男子の声と足音が聞こえた。

嘘っ、近づいてきてる⁉
花束持ってるし、このままじゃ……。


急いでバッグのチャックに手を伸ばしたけれど。



「こっち来てっ」



一瞬にして腕を掴まれて、小走りでその場を後に。

周りに人がいないのを確認しつつ、数時間前に来た場所に身を隠した。



「いきなりごめんね。あのままだと誤解されると思って」

「いえ……っ」
< 206 / 312 >

この作品をシェア

pagetop