猫目先輩の甘い眼差し
全力疾走してないのに、そこまで長い距離を走ってないのに。胸の鼓動がバクンバクンとうるさい。
ここで手を握られたから、外が暑いからってのもあると思うけど……それよりも。
「先輩、さっきのは、本当ですか……?」
隣で小さく呼吸を整えている彼に尋ねた。
「うん。本当。市瀬さんのことが好きだよ。今日、優勝したら言おうって思ってた」
「っ……」
再び真っ直ぐな目で告白されて、ジワジワと目頭が熱くなる。
どうしよう。嬉しすぎて涙が出そう。
一体いつから好きだったの? 気があるそぶりなんてあった? それとも私が気づかなかっただけ?
色々聞きたいことはあるけれど、まずはこの気持ちに答えなきゃ。
「私も、一ノ瀬先輩が好きです」
切れ長の大きな目を見つめて、ハッキリ伝えた。
「えっ、本当に……? マジで……?」
「はい。先輩が好きです」
「えっ、ええーっ⁉」
驚きの声を上げた一ノ瀬先輩。
目をこれでもかというくらいに丸くしたかと思えば。
顔を隠すように、なぜか校舎の壁に頭をくっつけた。