猫目先輩の甘い眼差し
門の内側に自転車を停めて、身だしなみを整える。
時々、車で退勤する先生達に会釈しながら。
顔周りは……よし、何も付いてない。鼻毛も、出てない。
制服も、どこも乱れていない……っと。
鏡をしまっていると、遠くで自転車の音とパタパタ走る足音が聞こえてきた。
「零士先輩! 遅れてすみません!」
「ううん。俺もさっき来たところだから」
少し息切れしている世蘭ちゃんに笑顔で答える。
場所がわかりづらく、人目を気にしてなかなか動けなかったらしい。
「本当にすみません。炎天下の中待たせてしまって」
「いやいや。俺のほうこそ」
お互いに謝り合っていると、その横をまた車が1台通り過ぎていった。
うわ、今の担任の先生じゃん。気まずっ。
世蘭ちゃんの顔は見られてないけれど……俺の浮かれている顔は見られてしまった。
しかもこんな場所で2人。
これからデートに行くんだなって絶対思われたな。恥ずかしい。
これ以上だらしない顔を見られないよう、誰も来ないうちに学校を後にしてショッピングモールへ向かった。