猫目先輩の甘い眼差し
✾✾



「世蘭ちゃんは先月何してた?」

「夏休みに入ってすぐ、学校説明会に行きました」

「俺も! 先月末に行ったよ。今月も何回か行くつもり」



中央広場にある館内地図を見ながら近況を報告し合う。


今月は志望校を決めるため、学校見学会や説明会に行く予定が多い。

だから、世蘭ちゃんと会える時間がないんだよな。まとまった時間が取れるのは登校日くらい。


今まで毎日のように顔を合わせていたから、長期間空くと寂しく感じる。



「忙しいですね。剣道のお稽古は毎週行ってるんですか?」

「うん。勉強ばかりだと息詰まっちゃうし」



そう答えると、何かひらめいたのか、世蘭ちゃんが「あの……」と小さい声で口を開いた。



「もし時間があれば、お稽古が終わったら少し話しませんか? せっかく近所に来るのなら、ほんの数分でも会いたいです」



言い終わった世蘭ちゃんの頬がほんのり紅潮している。


もう……なんでそんな嬉しいことを可愛い顔で言うの? 俺の心読んだの?

「会いたいです」って、そりゃあ俺だって……。
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