猫目先輩の甘い眼差し
「気持ちはわかるよ。あいつ、会話には参加するけど、あまり自分のこと話さないんだよね」
「それは、なんとなくわかります。11月生まれで、寮生活で、お菓子屋さんでバイトしてることくらいしか知りません」
あ、そうなんだ。
秘密主義なのかなと思ったけど、けっこう打ち解けてるっぽい。
ただ、その理由はまだ話してなさそう。
「今日は普通に挨拶してくれたんです。けど、やっぱりどうしても引っかかるんですよね」
「そんなに印象的だったんだ?」
「はい。先輩の言った通り、思い違いならいいんですけどね」
眉尻を下げて弱々しく笑った世蘭ちゃん。
神経質な部分をあれだけ強く気にしていた理由がわかった。
ことあるごとに微々たる違いに気づくのも、それはそれで頭が疲れるよな……。
「もし何かあったら……」
「わかってます。すぐ相談しますって」
「ならよし」
そう言うと、いつもの笑顔に戻って一安心。
不安を取り除くために真相を尋ねたいけれど、誤解だったら逆に溝が深まるかもしれない。
ひとまずここは、しばらく様子を見るか。