猫目先輩の甘い眼差し
「うん。グミならあるよ」
「やったぁ。俺のビスケットと交換しよ!」
「いいよ」
チャック付きのポリ袋を開けて、彼の手のひらに数個グミを出し、お礼にビスケットを2枚もらった。
再び新たなお菓子を求めて、笹森くんは後ろの列へ。
元気だなぁ。
いや、これが旅行を楽しんでいる人なら、普通のテンションなんだよね。
ビスケットにかじりつき、前方の席に視線を移す。
今日はまだ、挨拶もしていなければ、1度も顔を合わせていない。
先週、零士先輩といるところを見られ、怖くなって逃げ出してしまった。
校門から離れた場所だったけど、その代わりに寮から1番近い場所だったと、帰宅した後に気づいた。
制服じゃなくて部屋着のような服装だったので、恐らく忘れ物を取りに来ていたのだろう。
逃げ出した理由は、単に気まずかったというのもあるんだけど……。
すると、おもむろに樫尾くんが席を立つのが見えて、反射的に視線を外に向けた。
……少し、似てたんだ。
私に顔を引っ叩かれて驚いていた、彼らの顔に。
呆然としていた彼らの顔が、樫尾くんの顔に重なっちゃったんだ。