猫目先輩の甘い眼差し


「うん。グミならあるよ」

「やったぁ。俺のビスケットと交換しよ!」

「いいよ」



チャック付きのポリ袋を開けて、彼の手のひらに数個グミを出し、お礼にビスケットを2枚もらった。

再び新たなお菓子を求めて、笹森くんは後ろの列へ。


元気だなぁ。
いや、これが旅行を楽しんでいる人なら、普通のテンションなんだよね。


ビスケットにかじりつき、前方の席に視線を移す。

今日はまだ、挨拶もしていなければ、1度も顔を合わせていない。


先週、零士先輩といるところを見られ、怖くなって逃げ出してしまった。

校門から離れた場所だったけど、その代わりに寮から1番近い場所だったと、帰宅した後に気づいた。

制服じゃなくて部屋着のような服装だったので、恐らく忘れ物を取りに来ていたのだろう。


逃げ出した理由は、単に気まずかったというのもあるんだけど……。


すると、おもむろに樫尾くんが席を立つのが見えて、反射的に視線を外に向けた。


……少し、似てたんだ。

私に顔を引っ叩かれて驚いていた、彼らの顔に。

呆然としていた彼らの顔が、樫尾くんの顔に重なっちゃったんだ。
< 258 / 312 >

この作品をシェア

pagetop