猫目先輩の甘い眼差し
心の声を読み取ったのか、先輩が後ろから抱きついてきた。
「ちょっと、人前でなにイチャついてるんすか」
「イチャついてない。見せつけてるだけ」
抱きしめる力を強めて、肩に顎をちょこん。
バックハグってだけでもドキドキするのに、肩にまで……っ。
恐る恐る樫尾くんを見ると、階段下で浮かべていた時と全く同じ顔をしている。
「……片想い中の俺へのあてつけですか」
「あれ? 妬いてるの?」
「違います。呆れてるんです。市瀬さん、なんかごめんね」
少々強引に先輩を引き剥がした樫尾くん。
溜め息までついちゃってる。
「ほら、帰りますよ。明日早いんですから」
「はいはい。行こうか世蘭ちゃん」
「っ、はい……」
差し出された手のひらに自分の手を重ねたら、指を絡められてカップル繋ぎに。
その様子も見られていたのか、樫尾くんの口から再び溜め息が漏れた。
キスシーンだけならまだしも、照れ顔まで見られちゃったなんて……。
顔から火が出て燃えてしまうほどの恥ずかしさに、駐輪場に着くまで顔を上げることができなかった。