猫目先輩の甘い眼差し
何度も言い聞かせて学校を後にし、バイクに乗る。
すると、ここであることに気づく。
「あれ? 急にどうしたの?」
「……すみません。少しゆっくり走ってもらえませんか?」
行きはまだ明るかったため、さほど気にならなかったのだが、今は日が完全に沈んだ夜。
夜道を走るのは、初めて。
「さっきまで威勢良かったのに、別人じゃん。なに、俺ともっと一緒にいたいの?」
「ち、違いますっ! 暗いので怖いだけです!」
背中にピタッとくっついて、腰に回した手に力を入れた。
本当はギュッて抱きついてしまいたいんだけど、それだとかえって窮屈だろうから、ギリギリの距離を保っている。
「わかりました。怖がり世蘭ちゃんのために、安全運転で行きますね」
「……お願いします」
クスッと笑う声が聞こえた数秒後、ゆっくりバイクが動き出した。
「はーい、着いたよ」
「ありがとうございました」
家の駐車場にバイクを停めて、防具を外す。
最初はビクビクしてたけど、街灯があったからそこまで怖くはなかった。