猫目先輩の甘い眼差し
駐車場の前で一時停止し、窓を開けた母。
先輩との会話に夢中になってて、車が1台なかったことに今気づいた。
「こんな時間にどこ行ってたの」
「ちょっとスーパーに。明日のお弁当のおかずを買いにね!」
「……明日、祝日だけど」
「ええっ⁉ そうだったっけ⁉」
「うっかり忘れてた〜」と呑気に笑い、そのまま頭から突っ込んで駐車。
そんな母に溜め息をつきながら、ドアを開けて荷物を運び出す。
袋の隙間からは、値引きのシールがチラチラと見えている。
これは相当買い込んだな……。
「こんばんは。世蘭さんと同じ部活に所属しています、一ノ瀬と言います。帰宅が遅くなってしまってすみません」
「いえいえ! 娘がお世話になりました」
手をブンブン振る母をよそに、大量のおかずが入った袋を抱える。
すると。
「……あら? あなた、どこかでお会いしたこと……ある?」
お母さん……⁉ いきなり何言い出すの⁉
そんな口説くような言い方して……零士先輩固まってるじゃん! やめてよ!
「思い出した! 確かベルを捕まえてくれた……!」
「はいっ! そうです!」