猫目先輩の甘い眼差し
──ドサッ。
固まった表情から一変し、キラッと輝いた笑顔。
あまりにも衝撃が強くて、持った袋を落としてしまった。
え、え、ええっ?
ベルを捕まえたのが、零士先輩?
う、嘘でしょ? 今まで1度もそんなこと……。
「一体どういうことですか……?」
「ごめんね。なかなか言えなかったんだ」
先輩が言うには、稽古を終えて帰っていたところに出くわしたのだそう。
ベルの写真を見た時、助けた猫とそっくりだったらしく。
私と交流していくうちに、名前や家の場所など、共通点が多いことに気づいた。
しかし、私の口からベル脱走事件の話を聞いたことがなかったため、確証が持てなかったという。
「聞いてくれれば良かったじゃないですか」
「ごめん。猫違いだったら申し訳ないかなと思って」
猫違いって……。
猫愛が強い、なんとも先輩らしい理由だ。
「あの時は本当にありがとうございました! あ、せっかくなら今連れてきましょうか!」
「ちょっ、やめてよ! また逃げたらどうするの!」
あっ、しまった……!