猫目先輩の甘い眼差し
「いえ、今日はもう遅いですし。また後日、伺いに行きます。またね、世蘭ちゃん」
「……はい」
本性を露わにした私に、にこやかに手を振る零士先輩。
我慢しているのか、小刻みに肩が震えている。
見事な神経質だことって笑ってるんだろうな。恥ずかしい……。
母と2人で荷物を抱えて零士先輩を見送った。
「いやぁ、まさか同じ学校だったとはね。しかも部活まで同じだったなんて」
「うん。ビックリだよね」
姿が見えなくなるのを確認して家の中に入った。
お母さん、それだけじゃないよ。
実はトラ吉も助けてもらってるの。あと、将来の夢も同じなんだよ。
お父さんとも1回会ってて、実は数時間前にも会ってたんだ。
なんて言ったら、ビックリどころか、驚愕して腰抜かしちゃうかな。
「素敵な部長さんだったね」
「……うん」
優しくて、かっこよくて。
海みたいに広くて深い、心と愛情を持っていて。
本当に、私にはもったいないほどの素敵な人。
「いつでも連れてきていいからね!」
「…………うん」
キラキラ。ワクワク。
夕方に見た父と全く同じ瞳をしている。
似た者夫婦だなぁと、内心思いつつも。
思春期の娘の気持ちを考えて詮索しない、両親の優しさに感謝したのだった。