猫目先輩の甘い眼差し
防具を身に着けて後ろに乗る。
今日はツーリングではなく──零士先輩のお家にお邪魔しに行くのだ。
学校とは逆方向にバイクを走らせること、十数分。
住宅街の中にある一軒家に到着した。
「ただいまー。連れてきたよー」
「はーい!」
玄関を開けた途端、返事と共に、奥からドタバタと足音が聞こえてきた。
「こんにちは。はじめまして。零士の母です」
やってきたのは、母と同年代くらいの、パッチリした目が特徴的な女の人。
零士先輩のお母さんだ。
「はじめまして。零士さんとお付き合いしています、市瀬世蘭と申します」
「こちらこそ。来てくれてありがとう。零士がいつもお世話になっております」
玄関先で握手を交わす。
この優しく包み込むような触り方……先輩とそっくり。
顔のパーツも、大きな目や笑顔が似ている。
体型は父親似、顔立ちは母親似かな?
「さぁさぁ! 中でたくさんお話しましょ!」
「はいっ。お邪魔します」
靴を脱いで家に上がり、リビングへ。
持ってきたお土産を渡してソファーに腰かける。