猫目先輩の甘い眼差し


体を離して、こぼれ落ちる涙を拭ってくれた。


最後の最後で、泣き顔を晒してしまった。しかも先輩の部屋で。

下にご家族がいるというのに……。



「さっきの答え……もちろん、今より親密な関係になりたいと思ってる」



やっぱり……。



「だけど、今はこのままの関係でいたい」

「えっ」



このまま……?
キス止まりの今の関係でいたいってこと……?



「どうしてですか?」

「まだ早いかなと思って。それに、お互い夢を追ってる最中だから。もし何かあったら、世蘭ちゃんのほうに負担が多くかかっちゃうし。夢に向かうのを邪魔したくないよ」



真っ直ぐな目で、胸の内全てを吐き出してくれた。

色んな理由を並べてたけど、1番の本音が最後に詰まっていたような気がして、再び目頭が熱くなる。



「本当にいいんですか……?」

「うん。付き合ったからって、無理にする必要はないし。俺らは俺らのペースで、ゆっくり進んでいこう」

「はい……っ」



嬉しくなってガバッと抱きついた。

本当に、なんて素敵な人なんだろう。
幸せすぎて、また涙が出てきちゃいそう。
< 307 / 312 >

この作品をシェア

pagetop