猫目先輩の甘い眼差し
ドアの向こうから聞こえた、無邪気さいっぱいの可愛い救いの声。
由宇くん、ありがとう……!
「はーい」と返事をして立ち上がろうとしたけれど。
「ダメ、今日は俺の傍から離れないで」
グイッと強引に腕を引っ張られてベッドに着席。再びバックハグ状態に。
「お菓子ならその辺に置いといて。あとで取るから」
「…………はーい」
ワントーンならぬ、ツートーン下がった返事が聞こえた。
「ったく……せっかくいいところだったのに」
「ちょっと! 何してるんですか!」
「それはこっちのセリフだよ。なんで勝手に逃げようとしたの?」
「してません! お菓子もらおうとしただけです!」
「ええー、本当に?」
数分前と同じく、また耳元で話し始めた。
拗ねているのだろうか、先程よりも力が強く、振りほどけない。
まるで、絶対逃がすまいと捕まえているみたいだ。
「もう、今ので誤解されましたって」
「大丈夫大丈夫。中1が、大人の世界のことなんて想像できないよ。それに、外では人見知りだから恋愛経験もほとんどないし」