猫目先輩の甘い眼差し


ドアの向こうから聞こえた、無邪気さいっぱいの可愛い救いの声。

由宇くん、ありがとう……!


「はーい」と返事をして立ち上がろうとしたけれど。



「ダメ、今日は俺の傍から離れないで」



グイッと強引に腕を引っ張られてベッドに着席。再びバックハグ状態に。



「お菓子ならその辺に置いといて。あとで取るから」

「…………はーい」



ワントーンならぬ、ツートーン下がった返事が聞こえた。



「ったく……せっかくいいところだったのに」

「ちょっと! 何してるんですか!」

「それはこっちのセリフだよ。なんで勝手に逃げようとしたの?」

「してません! お菓子もらおうとしただけです!」

「ええー、本当に?」



数分前と同じく、また耳元で話し始めた。

拗ねているのだろうか、先程よりも力が強く、振りほどけない。

まるで、絶対逃がすまいと捕まえているみたいだ。



「もう、今ので誤解されましたって」

「大丈夫大丈夫。中1が、大人の世界のことなんて想像できないよ。それに、外では人見知りだから恋愛経験もほとんどないし」
< 309 / 312 >

この作品をシェア

pagetop