猫目先輩の甘い眼差し
穏やかな口調で自信満々に言い切った零士先輩。
いやいや、中学生なら充分あり得ますし、人見知りはあまり関係ないと思います。
もし興味がないなら、私達にあれこれ聞いてこないですって。
「さ、続きしよ?」
「あっ……」
そう囁いた後、チュッと耳にキスをして。
さらに、耳たぶを唇でハムハムと甘噛みし始めた。
もう本当、この人ときたら……。
下には親が、隣の部屋には弟さんがいるかもしれないっていうのに。
そんなだから、スキンシップ大好き男って言われるんですよ。
「……大型にゃんこ」
「ん? 何か言った?」
「いえ、なんでもないです」
ベルよりも、トラ吉よりも、とてつもなく甘えん坊で、大きな猫さん。
今の姿は優雅な黒猫さんじゃなくて、甘えん坊な黒猫さんだ。
「……ネックレス、また着けてきてくれたんだ」
耳を解放した先輩が、首周りのネックレスに指をかけてきた。
目を伏せた先には、部屋の明かりに反射して、濃い青が輝いている。
「先輩の誕生日にも贈りますね。数年後に」
「数年後かいっ」
「当たり前です。バイトしてないんですから」
そう言い返しながら振り向き、至近距離で目を合わせて笑い合う。
「世蘭ちゃん、大好き」
「私も。大好きです」
再び飛んできた、愛の言葉。
そして、真っ直ぐ私を見つめる大きな瞳。
このロマンチストな先輩の甘い眼差しからは、一生逃れられない気がした。
END