猫目先輩の甘い眼差し
一昨日と同じ、柔らかい笑顔。
あの時はバタバタしてたから気づかなかったけど、背高いなぁ。180センチ近くありそう。それにガタイもいい。
体格と顔立ちだけだとちょっぴり怖い印象。
だけど、声のトーンや表情は優しい。
だから安心して身を任せたのかな。
数秒で一通り想像を巡らせ、名乗ろうと口を開いたその時。
「あれ? もしかして、トラ猫ちゃんの飼い主さん……?」
わずかな差で先輩が先に口を開いた。
「はいっ! そうです! 先日は本当にありがとうございました!」
「いえいえ。同じ学校だったんだね」
無事にお礼が言えて胸を撫で下ろす。
良かった。
顔合わせたの、ほんの数十秒だったから、覚えてるか不安だったんだよね。
先輩の後ろで微笑んでいる2人が見え、さらに顔が緩む。
「あっ、すみません。まだ名乗ってませんでした。2年の市瀬世蘭です。去年から動物部に入ってます」
「えっ! 名字も同じなの⁉」
「「違いますよ!」」
名乗った瞬間、仲良く見守っていた2人がハモりながら口を挟んだ。