猫目先輩の甘い眼差し
開いた瞳孔、ワントーン上がった声、緩んだ口元。
じっと答えを待つその姿は、まるで大きなワンちゃんそっくり。
ほんの数分前に人を脅していたとは思えないほどの変貌ぶりだ。
「えっ、と……5対5で、どっちも好きなんです」
見えない圧力に怯みつつ、正直に答えた。
機嫌を損ねないように誤魔化そうか。
って、一瞬思ったんだけど……。
部長もいる手前、嘘は良くないと判断し、本心を伝えた。
しかし……。
「………………」
答えた途端、上がっていた口角が下がり、目の輝きも消失。
期待していた答えとは違ったんだなと瞬時に察した。
「……零士、本当に何も吹き……」
「吹き込んでませんって! 負けず嫌いもいい加減にしてください」
ジロリと視線を向けた先輩だったけど、再び樫尾くんが間髪を入れずに怒った。
「彼女は零士さん目当てじゃなくて、純粋に動物が好きで入ったんですよ」
「マジで?」
「はい。マジです。零士さんのことも、つい先週知ったばかりです」