猫目先輩の甘い眼差し
「──と、まぁこんな感じかな。あとは脱走に気をつけること! ね、市瀬さん」
「っ……!」
不意打ちで話を振られて、ドキッと心臓が脈を打った。
脱走って……まさかトラ吉のことを言ってる⁉
これも一ノ瀬先輩が教えたのかな。恥ずかしい……。
「目黒先輩の言った通り、少しでもドアが開いてると逃げ出す可能性があるから、最後まで閉めるのを心がけて。あとは……毎日たっぷり可愛がることかな」
記憶に新しい経験談を伝え、最後に捻り出した答えを口にした。
「ありがとうございます! 帰ったら家族ともう1回話してみます!」
「おー、良かった良かった。飼ったら教えてね!」
「はい!」
曇り空のように暗かった顔が、パアッと晴れやかな笑顔に。
大事なことはほとんど先輩が言っちゃったから、あまり上手いことは言えなかったけど……伝わったみたいで良かった。
✾✾
「楽しんでたところごめんね。覚えてる範囲でいいから聞かせてくれないかな」
「はい。いいですよ」
談笑すること十数分。
一旦グループを抜けて、目黒先輩と2人で生物室近くの階段にやってきた。