きみは桜姫。
昼休み。私は校舎裏に来ていた。

そこに谷口くんがやってきた。

短い黒髪に、黒縁メガネ。

谷口くんは、この進学校でもクラス1成績が良くて、頭がいい男の子だった。

「あの、三好さん……」

「谷口、くん?」

「あの、三芳さん、僕と、付き合ってください!」

「………え、谷口くん?……私のどういうところが好きなの?」

「すべすべの肌も、ふわふわの髪も、香りも、全部好きなんです!」

「そっか……ごめんなさい!」

「あ……」

「私、自分の容姿に自信がなくて。だから見た目がいいって言ってくれて、嬉しかった。でも……」

私はそこまで行って、はっとした。

「わたし……他に好きな人がいるから」

そうだ、私には好きな人がいる。なんで忘れていたんだろう。

新しい生活、新しい友達。それでも、私は……宙くんに会いたい。

家が近くなのに、スケッチブックをくれたあの日以来会っていない、宙くんに会いたい……

「そっか、ごめんね」

「こちらこそごめんね」


谷口くんのことは振ってしまったけど、なんだか自分に自信を持っていいのかな、とか思った。

< 110 / 227 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop