西岡三兄弟の異常な執着~After Story~
「え?」
「いえ…少なくとも、私はそうは思いません」
水樹は秀実に向き直ることなく、作業をしながら言った。
「水樹さん?どうゆうことですか?」
「………秀実さん、今後は花苗“さん”なんて呼ばないように気を引きしめた方がいいですよ?」
「は?」
「ご主人様方は、本当に恐ろしい方々です。
先程私が言った意味も、わかってくると思います」

水樹が秀実を見据え言った言葉に、秀実が凄まじい重みがあるような気がしていた。


もう少しで、三兄弟が帰ってくると森宮から連絡をもらった水樹。
花苗を呼びに、部屋に向かっていた。
ノックをして、朱雀・花苗の部屋に入る。
花苗はソファでうたた寝をしていた。
水樹が花苗の足元に跪いて、声をかけ起こす。

その間秀実は、部屋を見渡していた。
広い部屋だ。
屋敷自体が秀実の実家と雲泥の差だ。

これだけでも西岡一族が、どんなに高貴な一族かというのがわかる。

西岡一族といえば資産家で、よく冗談で“王族”だと言われていた。
その意味が、秀実はわからなかった。
“sima”を立ち上げたことで、急激に島家も富裕層の一員になれた。
なのでいくら資産家だと言っても、島家なら対等に関わることができる人達だと思っていたのだ。

しかしパーティー内での、三兄弟への周りの対応やこの屋敷を見ると“王族”というのが冗談ではないということがわかるのだ。

「やっぱり、羨ましい……」

昔は小さなコンピューター会社ではあったが、秀実も令嬢として何不自由なく暮らしてきた。
そして黄河は、高校の同級生だ。
その頃から憧れていた秀実にとって、黄河の妻になることは夢であった。黄河のような一流の男の妻になることは、世の女性にとっての憧れだ。
黄河が結婚を受け入れたと聞いて、天にも昇る気分だったのに一気に地獄に突き落とされたのだ。

でもなんとか黄河に気にいってもらい、いつか本当に妻になれたらいいと思っていた。

「花苗様!?
なんか、顔が赤い……え?熱が…!?」
水樹の焦った言葉で、我に返った秀実。

水樹は直ぐ様、森宮に電話をかけた。
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