西岡三兄弟の異常な執着~After Story~
「水樹はさ、苗の事思ってくれてんだよね?」
「はい」
「だったら“苗の為に”ここは、退けよ!」
「え?」

「苗、言ってたよ。
水樹さんって、お母様みたいって。
だから水樹さんには、辞めないでずっと家政婦さんでいてほしいなぁって!」

「花苗様が……?」
水樹は自然と、目が潤み出していた。

「お前が花苗をおもってくれてるのは、知っていた。
でも忘れるな!
この残酷で、異常な生活から放れられないのは“花苗自身”だ!
朱雀が“僕を助けて”と言ったあの日から、花苗は全身全霊で朱雀を愛してくれている。
だから、ここは退け!」

「早く、帰って!
今はまだ、僕は僕でいられる。
花苗を悲しませることになる前に、早く!!」
朱雀が悲しそうに、顔を歪ませ水樹に訴えた。

水樹はギュッと目を瞑り、顔を上げ天井を向いた。

そして再度、朱雀に向き直った。

「若様。
…………いえ、朱雀様」
「は?何!?」


「私は、最初から……」
「………」
水樹の目から涙が溢れ落ちた。

「花苗様には、朱雀様ではなく、紫苑様がお似合いだと思ってます」

水樹は、朱雀を見据えて言った。

「━━━━━━!!!!」
三兄弟の目が見開かれた。
そして、朱雀の目の色が変わった━━━━

それでも水樹は、更に言葉を続ける。






「花苗様を幸せにできるのは、朱雀様ではなく紫苑様です!」


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