日溜まりの憂鬱
 膝を抱え、何度も溜息を吐いた。
 姿見に映る菜穂の姿は自信もなければ覇気もない。
 この情けなくて濁った眼をした女が自分なんだ。直視するのがつらかった。

 そもそもどこでしくじったのか。何がいけなかったのか。そんなことを考えれば考えるほど自分が苦しくなるのに「もういいや」と開き直れない。

 言葉遣いや発声がシャキッとした印象を持たれ、見た目に関しては意思が強い女性に見えるらしい。黒過ぎず、明る過ぎずの髪をショートにしていたこともあり、あっさりとした人間性に思われるようだ。

 菜穂の第一印象はいつも好印象を抱かれることが多い。「あっさりしていそう」「才能を感じる」「ビジネスセンスに長けていそう」そんな高評価を受ければ、期待に応えなければという使命感が芽生えてしまう。

 だが実際の自分は才能もなければ、ビジネスセンスなど持ち合わせていない。こんなふうにグズグズと悩む自分があっさりしているはずがない。

 そう見える、そう感じる、という根拠なき他者からの第一印象が菜穂を苦しめた。

 失望されたくない。
 人が自分をどう見ているのか、自分の評価が気になって仕方がない。

 初っ端から高評価を得ればそれを保ち続けるか、それ以上の評価を得るしかない。
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