日溜まりの憂鬱
 要するに自分の評価が目に見えて下がり、物事が空回りし始めれば、焦りが生じ、それが余計に空回りに拍車をかけるという最悪の負のループに陥ってしまうのだ。

 だが、それも思い込みだったのかもしれない。
 最初から期待されていなかったのかもしれない。人が菜穂をどう見ているか、どう評価しているか、その答えは菜穂にはわからない。

 それなのに神経が擦り切れるほどに人目を気にし、小鳥の群れの中で自分がどのような存在であれば良いのか、輪から逸脱しないためにはどうすれば良いのか、周囲を失望させないためには……期待値を保ち続けるには……

 もう辞めたい―――

 ぷつ、と張りつめていた糸が切れる音がしたのは決算期を終え、新しい期が始まった四月だった。
 入社から丸二年が経過。幾度となく挫けそうになりながらも二年間、懸命に努力してきたつもりだった。が、所詮は「つもり」だったらしい。

 人事異動に伴う昇進降格が正式発表された。

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