日溜まりの憂鬱
 入社一年目でシェフが作る本格惣菜を見事成功させた野田さんは、二年目にして企画・サービス部主任という異例のスピードでの出世だった。
 加えてリーダー性や面倒見の良さが評価され、新人教育リーダーという肩書までつくことになったのだ。

 菜穂は異動も昇進もなかった。
 決して冷遇されたわけではない。入社三年、四年目の先輩であっても肩書きがない人はざらにいる。これが普通であり、一般的なんだ。ただ野田さんがずば抜けた才能を発揮し、期待値を上回っただけなんだ。

 菜穂は何度も自分に言い聞かせた。

 けれど二年前、野田さんと同じ日にスタートを切ったはずなのに明暗を分けたのはどのタイミングだったんだろう。
 私はいつ、どこで、しくじったのだろう。どこで進む道を間違えたのだろう。あれほど失敗しないように、しくじらないように、つまずかないように、気を付けてきたのに。

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