日溜まりの憂鬱
 ほぼ毎日職場で顔をあわせるメンバーとネットでまで繋がるのは億劫でたまらなかった。
 でも「みんながやっているから」という諾々とした流れに抗うことが出来ず、野田さんや他の社員たちが記事を更新させればイイネやコメントをしていた。

 特別どうってことのない記事。
 何を食べた、何を飲んだ、どこに行った、誰と何をした。そんな一挙手一投足を報告し合い、その内容で皆一様に盛り上がり、SNSを楽しんでいた。

 野田さんが投稿する記事は飲食に纏わるものが多かったが、文章もユーモアがある。
 ついたコメントの返しにしてもウィットに富み、軽快だった。ネット上でも自然と人が集まり、職場外のフォロワーも右肩上がりに増えていった。

 菜穂はたかがSNSであっても、人目を気にしてしまい、投稿する文章、コメントでさえも何度も何度も読み返す。

 自慢になっていないかとか、しょうもな、と鼻で笑われないだろうかとか、頭が悪いんじゃないの? と冷ややかな目で見られないだろうかとか。

 そんなことばかりを気にしているうちに何を書き、どのように人と接したらいいのかわからなくなってしまった。

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