日溜まりの憂鬱
 野田さんが昇進したその日。彼女の投稿には称賛コメントが次々に寄せられていた。
 菜穂も儀礼的に「おめでとう。さすがだね!」とコメントしたが虚しさが押し寄せた。

 ふと別アカウントを取得してみようと思ったのは、自分の胸の裡を全て吐き出したかったからだ。

 速やかに新しいアカウントを取得した。
 実家で飼われている雌のチワワの写真をアイコンにし、名前は「チョコ」という彼女の名前を拝借した。

 ひたすら書き殴った。思いの丈をぶちまけた。野田さんに対する妬みや嫉み、会社への不満、そして自分に対する不甲斐なさ。

 初めての投稿は毒素まみれのネガティブなものだった。だが別にどうでも良かった。どうせネット上のチョコが誰なのか、そんなことは誰にもわからないのだから。

 書いたらほんの少しだけスッキリした。フォロワー0という気軽さ、人目を気にしなくてもいい解放感。ついでにもう一つ投稿した。

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