日溜まりの憂鬱
 言ってから修也がもう一度菜穂に口付けた。触れるだけの軽いキス。

「そのうちお葬式もアプリで予約すると割引になったりして」

 くすくす笑いながら菜穂が話に乗っかる。
 修也とは冗談交じりの会話が弾むのに、彼以外の人だとそうはいかない。「でもさ」と話の続きをしようとした。

「菜穂」

 修也の低い声に「ん?」と見上げる。唇を閉ざされた。

 今度は長く、長く。次第に修也の舌先が口の中に滑り込む。
 熱っぽいキスに目を閉じると、すっと修也の顔が遠ざかる。ゆっくり薄目を開けると目が合った。

「ねえ菜穂。まだ子供欲しくないの?」


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