日溜まりの憂鬱
 送信すると『気を付けてね』とすぐに返信が届いた。昼下がりの幸せなラリーに頬が緩む。

 修也とは半年ほどはネットのみの関係だったが、ふとした会話から比較的近いエリアに住んでいることがわかった。

 ネットで出会った男性と二人きりで会うということに僅かながら戸惑いはあったが、嫌とは思わず、むしろ会いたい気持ちのほうが強かった。

 日頃ラインで繋がり、何度か電話で会話したこともあった。
 でもリアルに「修」を目に映し、電話越しだった声を直接耳で聞くと、今度は彼に触れたいという欲求が芽生えた。

 お互いにそうだったのかもしれない。三回会った日の別れ際、「チョコが良ければ付き合って」と告げられ、当然断る理由なんてどこにもなかった。

 しばらくはチョコと菜穂、呼び名が不安定だったが、いつしか菜穂で定着した。そして樋口という修也と同じ姓になったのは、出会いから2年目、交際から1年半後だった。

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